" ───水月刀─── 桐葉が竜のごとく舞う。砂"
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下一篇 2019-06-20 16:54:29
" ───水月刀───
桐葉が竜のごとく舞う。砂煙が立ち上がる。窮屈に見えたバットの軌道は、竜のようにくねり、見事に内角高めのボールを芯でとらえた。
カキ-ーーーーーーーーン!!!
空は野球観戦を楽しんでいるかのように、青い空に白球を輝かせた。白球は気持ち良さそうに空を飛び、やがてスタンドのコンクリートで嬉しそうに跳ねた。
「マジか……すげえ」
思わず副島はそう漏らした。2打席連続のホームランがライトスタンドに突き刺さった瞬間だった。
桐葉がゆっくりと一塁を回る。横目に、ベンチでもみくちゃにされながら生還した白烏と三塁を小躍りしながら回る月掛の姿が見えた。その手前にうなだれた石田の姿があった。がっくりと頭を垂れ、膝に両手をつき、顎から汗を滴らせていた。それでも、垣間見えた石田の顔は笑っているように見えた。
石田は5回でこれほど点を取られるとは思ってもいなかった。精根を全て乗せた球がスタンドに跳ねた瞬間、がっくりと力が抜け、両手を膝についた。それでも、人生最高の球だったと言える。だから、笑った。今度こそリベンジすると心に誓ったから。
石田ー森本のバッテリーと桐葉の対決は、桐葉の2打席連発で結末を迎えた。
13-7。
6点差。
一人の男がキャッチボールを止めた。オーラというものがこの世に存在するのならば、この時にこの男が放ったものを言うのかもしれない。グラウンドに稲妻が走ったか……甲賀も理弁も、皆が動きを止めた。
「監督、いきます」
ピッチャー、石田に替わり、大伴資定。"
導入論壇
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